講演会レポート

講演会レポート

ものづくりの魅力を知ってもらおうと佐賀県が推進している「もの恋」プロジェクトでは、ものづくり現場の雰囲気や職人たちの情熱を伝えるために高校生に向けた講演会を行っています。
第2弾は、納品まで18カ月待ちという大ヒット商品「魔法のフライパン」を開発した錦見泰郎さん(56)の講演です。 取材年月:2017年1月

演題
ものづくりが教えてくれるオンリーワンの作り方

講演会レポート

常識超えに挑む

「魔法のフライパン」錦見さん講演 フライパンはどの家庭にも、どこの国にもある調理道具ですよね。私たちが作る「魔法のフライパン」は厚さ1.5ミリという、鉄の鋳物では極めて薄く軽いのが特長です。火の通りが良く、「自宅でもパラパラのチャーハンができる」という情報発信も消費者の心をとらえたのでしょう。累計20万個以上の売り上げを達成し、注文から納品まで1年半待ちの状態が続いています。
鋳物会社の2代目に生まれた私が、フライパン開発に乗り出したのは1992年のこと。取引先からの無理難題や、好不況に左右されず、自前の技術力で勝負できる会社になりたいと思ったことがキッカケでした。
しかし当時、常識とされていた鋳物の厚さは約5ミリで、かなりの重さがあります。日常使う調理器具ですから、軽さは絶対条件。そこで3年かけて2ミリまで薄くし、一流ホテルのシェフに使ってもらい絶賛されたものの、「まだ重い」という評価。ここからさらに6年かけて、1.5ミリ、重さ980グラムの「薄肉鋳造」のフライパンを完成させたのです。
もし2、3年でできる製品であれば、他社にすぐ真似され、やがて価格競争になるでしょう。どんな職人でも、1万回以上の試行錯誤を繰り返し、10年もの歳月をかけて、ようやくオンリーワンのものづくりができるのです。確かに、最初の1万回は難しい。しかしそれを超えると、少しずつ分かってくる。こうして獲得した技術は、AI(人工知能)や3Dプリンターがどんなに進化しても、決して代用できないでしょう。

情熱と粘り強さ

仕事をやり抜くために必要なのは、持って生まれた才能ではなく、何が何でも成し遂げたいという「情熱」と「粘り強さ」。そして、「人の役に立ちたい」という気持ちです。
皆さんも今、学校で学んでいる知識やスキルを使って、「世の中に役立ちそうなことはないかな?」と考えてほしい。自分の欲求を満たすためだけなら、いずれ挫折します。
逆に、「人や社会に貢献したい」「必要とされる人間になりたい」という使命感があれば、おのずと道は開けるのです。

「魔法のフライパン」錦見さん講演 「魔法のフライパン」錦見さん講演

生徒たちの感想

  • 生徒01 (電気科3年)
    生徒01 努力あっての達成という言葉に感動しました。卒業後の就職先は、海外にも自社製品を輸出し、世界で活躍する地元の会社です。僕も会社や社会に貢献できるように頑張りたい。
  • 生徒02 (建築科3年)
    生徒02 僕もこれから1万回を超える挑戦と失敗を重ねながら、経験を積んでいきたい。卒業後は地元の建設会社に就職します。僕のふるさとが全国で有名になるような建物をつくるのが夢。
  • 生徒03 (機械科3年)
    生徒03 「努力を重ねて、天職にする」ということを学びました。卒業後はメーカーに就職します。そこで一生懸命働き、粘り強く努力して、会社に認められる人間になりたいです。
プロフィール
錦見 泰郎さん
錦見鋳造株式会社 代表取締役社長 錦見 泰郎(にしきみ・やすお) 1960年名古屋市生まれ。1981年父が経営する鋳造所に入社し、2001年に2代目社長に就任。1992年にフライパンの開発を始め、1995年に厚さ2ミリ、重さ1200グラムのフライパンが完成。2001年には1.5ミリ、980グラムまで薄肉・軽量化を実現し、「魔法のフライパン」として発売。経済産業省「生活関連産業(日用品)ブランド育成事業」に認定された。中小企業庁「元気なモノ作り中小企業300社」選定。
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