講演会レポート

講演会レポート

ものづくりの魅力を多くの人に知ってもらおうと、佐賀県が推進する「もの恋プロジェクト」。その一環として、ものづくり職人による講演会を工業系高校で行っています。9月29日には北陵高校(佐賀市)で開催。 講師は、イチロー選手をはじめプロ野球選手のバットを作り続ける"バット職人"の名和民夫さんです。バット削りの実演を交えながら、仕事の魅力と喜びを語りかけました。 取材年月:2017年9月

演題
選手の思いに応えたい
クラフトマンの限りなき挑戦

講演会レポート

道具へのこだわり

ミズノ クラフトマン 名和さん講演 スポーツ用品メーカーのクラフトマン(職人)として25年間、イチロー選手をはじめとするプロ野球選手の木製バット作りに携わってきました。
木製バットは、木の角材を半年以上かけて乾燥させ、専用のノミやカンナで削って仕上げていきます。一流の選手はバットを握った瞬間に、重さや大きさなどわずかな違いにも気づくんですよ。ですから、ノギス(計測工具)で測りながら0.1ミリ単位の微調整を何度も繰り返します。木の切り出しからバットの納品までに要する期間は約1年。それだけ長い時間と手間暇がかかることを知っているから、選手は道具をとても大切にするのです。
選手たちとはシーズンオフの間に、来季のバットについて話し合います。「選手から無理な注文もあるのでは?」とよく聞かれますが、私は無理難題と思ったことは一度もありません。選手は1本のバット、1個のグラブ、1足のスパイクで成績が左右されるもの。だからこそ、道具に強いこだわりをもつのは当然です。私自身も技術をもっと高めて、選手の熱意に応えたいと常に思っています。

技術の継承が課題

ミズノ クラフトマン 名和さん講演 プロ仕様のバットを作るには、少なくとも10年の修業が必要です。私は25年のキャリアを重ねましたが、自分の仕事に満足することはありません。私のバットを持って大記録が達成された時や、「ありがとう」と声をかけられた時は、素直にうれしいです。しかしすぐに「もっと打ってもらうために、次はどうすればいいか」を考えます。現状に満足せず、一歩でも二歩でも高みに上ろうとする向上心こそが、ものづくりには必要なのです。
失敗も数多く経験しましたが、総勢10人のバットチームの仲間たちと支え合い、一丸となって選手をサポートしてきました。先人が苦労して培った技術を私たちが受け継ぎ、さらに磨きをかけ、後輩にしっかり継承すること。それが私の、今一番の課題です。
皆さんも周囲の人に感謝しながら勉学に励み、技術を学んでいってほしい。常に目標をもって努力を続けていれば、自然といい結果が生まれるはずです。

生徒たちの感想

  • 生徒01 (電子科3年)
    生徒01 イチロー選手はバット作りの大変さを知っているからこそ、道具を大切にするのだと実感した。将来は製品開発に携わりたい。道具を大切にし、感謝と尊敬に値する仕事ができればと思う。
  • 生徒02 (電子科3年)
    生徒02 周りの人に感謝することと、チームワークの大切さを学んだ。自動車関係への就職を志望しているが、ものづくりという意味ではバットも自動車も同じ。今日の話を仕事に生かしたい。
  • 生徒03 (自動車科2年)
    生徒03 プロ野球選手の満足を一番に考え、常に自分の技術を高めようとする姿勢が印象的だった。僕も就職したら、依頼者の話を積極的に聞いて、いいものづくりに反映させていきたい。
  • 生徒04 (電気科2年)
    生徒04 バット作りの実演を目の前で見て、細かく丁寧な作業に感激した。名和さんのメッセージどおり、周りに感謝して勉学に励み、さまざまな資格をとって、卒業後は製造業に就きたい。
プロフィール
名和 民夫
ミズノ クラフトマン 名和 民夫(なわ・たみお) 1967年岐阜県生まれ。工業高校を卒業し、1985年ミズノ入社。1993年からバット製造部門へ。数々のスター選手を担当した"現代の名工"久保田五十一さんのもとでバット作りを学び、その後継者となる。イチロー選手や横浜DeNAの筒香嘉智選手ら約100名のプロ野球選手を担当。自身も幼い頃から野球好きで、同社の軟式野球部で現在もプレーを続ける。
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